DX時代の大学運営|IRを駆使した効果的な戦略

DX時代の大学運営|IRを駆使した効果的な戦略

更新

現代の大学教育が直面している課題の解決策として、DX(デジタルトランスフォーメーション)とIR(インスティテューショナルリサーチ)の重要性が高まっています。本記事では、大学におけるDXの意義とその推進方法、IRの役割と実践事例を紹介し、これらが教育の質と運営効率をどのように変革するかを探っていきます。また、DXによる教育システムのデジタル化や学生の個別化教育、IRを活用したデータ駆動型の意思決定など、具体的な取り組みを紹介します。

大学DXとIR活用

DXとは

DX(Digital Transformation)は、デジタル技術を活用して組織の運営やサービスを根本から変革するプロセスを指します。経済産業省が発表した「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。大学におけるDXは、教育、研究、管理運営の各分野において、革新的な技術を取り入れることで、これらの活動をより効率的で効果的なものに変えることを指しています。

具体的には、オンライン学習プラットフォームの導入、クラウドベースの学生情報管理システム、バーチャルリアリティや人工知能を活用した学習体験の提供などが例として挙げられます。これにより、学生に対してはより柔軟で個別化された教育機会を提供し、教職員にとっては日々の業務を効率化し、より教育や研究に集中できる環境を整えます。

また、大学DXは、データ駆動型の意思決定を可能にし、教育の質、研究成果、運営の透明性を高めることにも寄与します。例えば、ビッグデータの分析を通じて、学生の学習パターンを理解し、教育プログラムの改善につなげることができます。このように、大学DXは、教育機関が現代のデジタル時代において競争力を保ち、持続可能な発展を遂げるための重要なステップです。

IRとは

大学運営におけるIR(Institutional Research)は、大学の教育や運営の質を向上させるためのデータ駆動型アプローチです。具体的には、学生の学習成果、教員の教育方法、大学の管理運営、資源配分など、さまざまな側面を定量的に分析し、その結果をもとに改善策を講じます。IRの目的は、教育の質の保証、学生の学習効果の最大化、そして大学運営の効率化です。データの収集と分析には、学生アンケート、成績データ、財務データなどが活用されます。

IRは、大学の意思決定プロセスをサポートするための重要なツールとなっています。例えば、どの学部にどれだけの資源を配分するか、新しい学部やプログラムの開設の是非、教育方法の改善など、具体的な運営戦略の策定に役立ちます。また、学内外のステークホルダーへの透明性を高め、説明責任(アカウンタビリティ)を果たすためにも重要です。教育機関が直面する多様な課題に対応するため、IRは戦略的な意思決定を支援し、持続可能な発展を促進するためのカギとなります。

大学DXの推進とIR活用の重要性

日本の大学が直面する教育改革の課題

大学運営にとってDXは、教育と研究の質の向上を図るための重要な手段です。学生の学習ニーズが多様化する中、個々の学生に合わせた柔軟な教育方法の提供が求められています。また、大学の国際競争力を高めるためにも、このようなデジタル化は不可欠です。教育システムのデジタル化により、学生へのアクセシビリティを高め、より効果的な学習経験を提供することが可能になります。

システム導入による業務効率化と経営改善

DXの進展は、大学の業務効率化にも寄与します。例えば、学生情報管理システムのデジタル化により、書類処理時間の短縮や人為的エラーの削減が期待できます。これにより、教職員は教育や研究活動に集中できるようになります。また、デジタルツールの導入による経営の効率化は、大学経営の持続可能性にも寄与し、よりよい教育サービスの提供へとつながります。

機関全体でのデータ活用と可視化

IRは、大学の意思決定をデータに基づくものに変える重要な役割を果たします。学生の学習成果や教員の研究成果など、さまざまなデータを収集・分析することで、より効果的な教育方針の策定が可能になります。データの可視化により、教育プログラムの改善点が明確になり、教育の質を継続的に向上させることができます。

大学IRの実践事例と取り組みのポイント

学内組織と教育プログラムの改革

IRの導入により、いくつかの国公私立大学が学内の組織構造や教育プログラムを改革しています。例えば、学生の学習成果データを分析し、カリキュラムの効果を評価することで、より効果的な教育プログラムの設計が可能になります。また、教育内容の柔軟性を高め、学生1人ひとりのニーズに合わせた学習環境を提供する取り組みも見られます。

北海道大学総合IR本部は、「経営戦略部門」と「教学部門」の2部門体制で、密接に連携しながらデータ収集・分析を経て、経営戦略策定に資するデータ分析を着実に進めています。

具体的に、経営戦略部門では、研究や管理運営に関するデータを収集し、「北海道大学ファクトブック」の作成と公開を行っています。このファクトブックは、大学の活動を可視化し、戦略的な意思決定を支援する重要なツールとなっています。

一方、教学部門では、教育に関する情報を集め、学生や卒業生からのアンケート結果を分析しています。得られた洞察は、教育の質の向上に直接貢献し、各学部への貴重なフィードバックとして機能しています。さらに、両部門は成績データや異分野連携研究のポテンシャルを分析・可視化するなど、全学的なIRデータの共有基盤である「北大BI(Business Intelligence)」の管理運営にも積極的に取り組んでいます。これらの努力は、学内のリソース再配分や経営上の意思決定において、総合的な指標を提供することで大学運営の質を高めています。

参考サイト:
北海道大学 総合IR本部

企業や自治体など産学官連携による地域支援

IRは、大学が地域社会との連携を強化するための有効な手段となっています。企業や自治体とのパートナーシップを通じて、学生に実践的な学習機会を提供し、地域社会の課題解決に貢献しています。このような連携は、学生のキャリア形成を支援し、大学の社会的責任を果たす上で重要な役割を果たしています。

中国・四国地域の5大学(島根大学山口大学広島大学愛媛大学徳島大学)は、教育研究業績に関する共通指標を策定のため連携し、教員の専門性を抽出・可視化する共同IRシステムを構築しています。この大学連携IRコンソーシアムは、大学間での人的資源の共有化と流動性の向上を可能としており、さまざまな社会ニーズへの対応と産学共創の推進を可能とする取り組みです。中国・四国地域から全国に展開し、教育研究業績指標の標準化につなげることを目的としています。

参考サイト:
広島大学「大学連携IRコンソーシアム

分析・評価機能の充実による経営判断の向上

IRを活用することで、大学経営の透明性と効率性が向上します。データ駆動型のアプローチにより、リソースの配分や教育プログラムの方向性をより科学的に決定できます。また、学生の満足度や卒業後のキャリアパスなどの指標を分析することで、経営陣がより戦略的な判断を下すことが可能になります。

静岡大学は、明確なビジョンや戦略を推進する存在感のある大学を目指しています。そのために、学内外の様々なデータや情報の収集・管理やその分析結果を活用した教育・研究・学生支援・社会貢献・財務運営などの大学経営を行う必要があると判断し、平成28年(2016年)10月よりIR室が設置され、IR活動を開始しました。

教学IRの分野では、学生の学習行動、学習時間、能力に関する自己評価、満足度などのデータから学修の状況及び成果を評価し、改善に役立てており、業務運営・財務IRの分野では、教育、研究および社会連携などの各業務運営の状況と関連づけ、より効果的で効率的な大学運営を進めています。

参考サイト:
静岡大学 IR室

大学IRの専門人材育成と組織運営

教職員の研修やセミナーの開催

大学IRの成功は、専門知識を持つ人材の存在に大きく影響します。そのため、DX化を見据えた大学の多くは、教職員向けの研修プログラムやセミナーを定期的に開催しています。これらの教育プログラムは、データ分析技術や教育効果評価の方法など、IRに関連する専門知識を教職員に提供することを目的としています。これにより、IRの取り組みを学内全体に浸透させ、効果的な組織運営を実現しています。

IRセンターを中心とした横断的なマネジメント

多くの大学では、IRセンターを設置し、横断的な組織運営を行っています。このセンターは、さまざまな学部や部門間の情報共有を促進し、組織全体の意思決定をサポートしています。IRセンターは、データの収集・分析を通じて、学内の教育改革や経営戦略の策定に大きく貢献しています。

学外の専門家や法人との協力体制の構築

IRの効果を最大限に引き出すためには、学外の専門家や法人との協力が不可欠です。これにより、大学は最新のデータ分析技術や教育評価の専門知識を取り入れることができます。また、産業界やほかの教育機関との連携により、実践的なIRの取り組みを推進し、学生に多様な学習機会を提供することが可能になります。

DX活用に必要な技術・ツールの開発/導入

DXの推進には、先進的なICT基盤の整備が不可欠です。多くの大学では、高速インターネット接続、クラウドベースの学習管理システム、オンラインコラボレーションツールなどを導入しています。これにより、リモート学習やデジタル教材の活用が可能になり、学生により柔軟で効果的な学習体験を提供しています。

アクセス可能なデータ資料の提供と公開

DXは、大学における情報のアクセシビリティを大幅に向上させます。教育資料、研究論文、学内ポリシーなどのデジタル化により、学生や教員が必要な情報を簡易的にアクセスできるようになります。さらに、これらの資料を公開することで、大学の透明性を高め、外部とのコミュニケーションを促進します。

国際連携による研究活動の促進

DXを活用することで、大学間の国際的な連携が強化されます。オンラインプラットフォームを介して、学生や研究者が世界中の同僚と協力し、共同研究を行うことができます。このような国際的なコラボレーションは、新たなアイデアの創出や研究の進展に寄与し、大学のグローバルな影響力を高めます。

大学DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

はじめてDXを導入する人も、DX導入経験のある人にも、おすすめできる予約システムとして、RESERVA(レゼルバ)を紹介します。

RESERVAは、26万社以上が利用する業界トップクラスの予約管理システムです。350以上の業種に対応しており、国公立大学、私立大学など多くの現場でも広く導入されています。このシステムの特徴は、無料プランから始められる手軽さにあります。また、サービス提供(スタッフあり・なし)、施設、宿泊施設、スクール・アクティビティ、イベント・セミナーといった6つの予約タイプに対応し、大学のあらゆる場面に最適な形で利用できます​​​​。

RESERVAは他のサービスとの連携が充実しており、ZoomやGoogleカレンダー、スマートロックといった外部システムとかんたんに連携できます。これにより、導入の初期段階での抵抗感が少なくなります。RESERVAは予約の失念を防ぐリマインドメールの送信や、オンラインカード決済機能も備えており、無断キャンセルや当日キャンセルを減らします。

予約システムの導入におすすめのRESERVAの詳細はこちらをご覧ください。

まとめ|大学DXとIRの最適な実践方法

本記事では、大学におけるDXとIRの重要性と、それらを成功させるための具体的な戦略を探りました。DXの導入による教育改革の推進、IRを用いた経営判断の質の向上、そして専門人材の育成や技術ツールの開発など、これらの取り組みは大学の持続可能な発展に不可欠です。

大学DXとIRの実施にあたっては、全体的な目標設定、関係者の積極的な関与、継続的なプロセスの評価と改善が重要です。大学がこれらの革新的な取り組みを適切に実施することで、教育の質を向上させ、学生、教職員、そして地域社会全体に対してより大きな価値を提供することができます。今回の記事を参考に、大学DXとIRの取り組みを効果的に進めましょう。

予約システムで、ビジネスを効率化

RESERVA.acは、大学向けのクラウド予約システム。国立大学、学校法人における導入実績は240以上。講義予約、オープンキャンパス予約、証明書発行窓口予約など様々なシーンで導入されています。