DX(Digital Transformation)という言葉が世界で定着しつつある一方、紙文化が強く根付き、学校では古くから掲示板での通知が主流である日本は、DXの活用において「後れ」をとっています。特に、新型コロナウイルス感染症の流行により、オンライン授業導入の遅さが浮き彫りとなった日本の教育機関は、今新たな変革途上にあります。
当社が運営する予約システムRESERVAでは、2020年4月以降、予約システムのご利用状況を分析し、各業界の動向を分析しています。今回は大学法人の動向について当社の稼働実績をもとにレポートします。
大学法人の皆さまにとって、有益な情報提供となれば幸いです。
「DX後進国」日本
現在、日本は「DX後進国」と言われています。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2020年9月26日に発表したIMD世界デジタル競争力ランキング2020によると、全63ヶ国・地域の中で日本は27位となっています。
ランキングは、政府や企業がどれだけ積極的にデジタル技術を活用しているかを示したものです。評価軸は以下の3項目です。
(1)知識(技術を開発し理解するためのノウハウ)
(2)技術(技術開発を可能にする適切な環境)
(3)将来への備え(技術を活用するための準備度合い)
全地域の中で1位はアメリカ、2位はシンガポール、3位デンマーク、4位スウェーデン、5位が香港。アジア圏のみでも、韓国が8位、台湾が11位、UAEが14位、中国が16位、マレーシアが26位となっており、日本のDXに対する「後れ」は明らかです。
日本では「紙文化」に代表される日本独自の企業文化が未だに残っており、「紙の書類として手元にあったほうが安心する」、「ペーパーレス化に多大なコストがかかる」、「社内でITリテラシーに差があり、浸透させるのが難しい」といった理由で導入にハードルを感じている企業は多く存在します。
文科省の新施策「Plus-DX」
近年、日本では「DX後進国」を脱却すべく、DXを活用して、社会を牽引するような人材を確保することを目指しています。代表的なプロジェクトが文部科学省によって実施されている、デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン「Plus-DX」です。
「Plus-DX」における2040年に向けた最終目標は、
デジタル環境を大胆に取り入れることにより、デジタル(オンライン)とフィジカル(対面・実地)を組み合わせたpostコロナ時代の高等教育における教育手法の具体化を図り、その成果の普及を図る
ことです。
過去にICT(Informationand Comunication Technology)を活用した教育の必要性は唱えられてきましたが、指導者不足や環境設備の遅れにより、普及は苦戦を強いられてきました。特に学習管理システム(LMS)の導入率において、米国は2013年時点で約100%に対し、日本は2017年時点で約60%と低迷しています。
しかし、近年では新型コロナウイルス感染症の流行を受け、遠隔授業の実施が大幅に増加しました。対面を避けての授業が余儀なくされ、2020年文部科学省の調査によると、8割以上の大学等が遠隔授業の実施または検討されるようになりました。
新型コロナウイルス感染症への一時的な措置として、遠隔授業を導入したものの、「授業の事前準備が入念にできる」「自分のペースで好きな時間に授業が受けられる」といった理由から、大学内では学生・教師ともに「対面授業が再開されても遠隔授業を実施して欲しい」という声が上がっており、DXを活用した教育システムにメリットを感じている人も多く見られます。
文部科学省による「Plus-DX」政策、そして新型コロナウイルス感染症流行による遠隔授業の普及で、教育現場におけるデジタル技術への関心が高まっている中、今後の大学教育はどのように進化していくのでしょうか。ここではDX導入によって期待される3つの効果について解説していきます。
DX導入による効果
学生本位の教育の実現
成果:学びの可視化、データに基づく教育の最適化
AIやチャットボット(RPA)を駆使して、学生はリアルタイムで24時間365日質問することが可能になります。さらに反転授業(オンライン教材で新しい知識を個別に事前に学習し、対面で演習を中心に意見交換を行う授業)の実施や、AIによる学習管理システム(LMS)の解析で、習熟度別学習(個人に最適化された教育)の提供が可能になる等、学生の成長実感・満足度に対する意欲が見えるようになります。
多様で柔軟な教育の実現
成果:地方大学の創生、国際交流の推進化、オーダーメイド支援の提供
地域の特色ある教育コンテンツや地域課題解決を目指すフィールドワークなど地方大学ならではの授業、多言語オンラインコンテンツや同時通訳技術を活用した「リモート留学」への参加が、「いつでも・誰でも・どこでも」できるようになります。さらに、学生データを収集し、AIを活用した解析などに基づき、健康管理、就職支援など、個々の学生生活に応じた支援の提供なども可能になります。
学びの質の向上
成果:デジタルとフィジカルの長所を融合した教育の実現
VR(Virtual Reality)を活用して、(対面ではない)理工系の実験・実習や保健医療の臨床教育・実習など、これまで困難と思われていた内容の遠隔授業が可能になります。講義やオンデマンド授業・VR等を活用した実験等の教育手法を組み合わせ、学びの質を向上させます。
RESERVA予約システムの活用
大学のDX導入は、学生側だけでなく学校側にも事務業務効率化のメリットがあります。当社の予約受付システム「RESERVA」は現に多くの国公立・私立大学・大学院に導入されており、大学説明会や就職相談などの予約などでご利用いただいています。最近では、新型コロナウイルス感染症の流行により、対面を極力避けるため、成績、卒業証明書の発行・受け取りを事前に予約できるシステムも開設されました。複雑な手続き業務を改善したいという大学法人の皆さま、無料プランもございますのでこの機会にぜひご利用ください。
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まとめ
世界各企業が「ポストコロナ」を見据えて戦略を見直し、DXを活用してイノベーションを生み出していく現代において、日本では教育機関にもDXを積極的に推進していこうとする動きが見られます。国を挙げて徐々に進んでいく教育のDX化は、10年後、20年後の日本を支える「デジタル人材」を生み出す第一歩かもしれません。