ラーニングアナリティクスで変わる学びの形|大学の学習支援を支えるデジタル技術

ラーニングアナリティクスで変わる学びの形|大学の学習支援を支えるデジタル技術

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デジタル技術の進化により、大学での学習支援の在り方が大きく変わろうとしています。中でも、ラーニングアナリティクスという学生の学習状況や成績、学習プロセスに関するデータを収集・分析し、より効果的な学びの提供を目指す取り組みによって、大学は学生一人ひとりの理解度や学習ペースに合わせたサポートを実現し、従来の画一的な指導から、パーソナライズされた学習体験を提供できるようになってきています。

本記事では、大学におけるラーニングアナリティクスの導入がもたらすメリットや、導入の方法、押さえるべきポイントについて、大学の導入事例を交えながら解説します。データを活用した学習支援が、どのようにして学生の学びを深め、教育の質向上につながるのかを探っていきます。

ラーニングアナリティクスとは

ラーニングアナリティクス(学習分析)は、デジタル技術を活用して、学生の活動やテスト結果などのデータを分析し、個別に適した学びを提供するための手法です。これにより、教員は学生の理解度や進行状況をリアルタイムで把握し、必要に応じて学習支援ができるようになります。たとえば、学習者がどの教材をどこまで学習したか、苦手なポイントを特定し、AIが問題を自動で推薦するシステムも導入されています。

また、ラーニングアナリティクスのデータは匿名化された形で教育政策にも活用され、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)にも貢献すると期待されています。背景には、社会からの「個別最適な学び」への要望があり、従来の一斉授業では対応が難しい多様化した学習ニーズに応えるために、ラーニングアナリティクスが教育の再定義を目指す手法として注目されています。

大学におけるラーニングアナリティクス導入のメリット

ラーニングアナリティクスのメリットは、学習の「結果」だけでなく「過程」もデータに基づいて詳細に分析できるようになった点にあります。これにより、従来把握しづらかった学習の進行状況や学習方法を記録し、その情報を改善に活用できるようになりました。また、デジタル技術の進展により、生体情報の管理も可能となり、課題に取り組む際の表情や心拍数なども記録できるため、どれだけ集中して学習に取り組んでいるかを可視化できます。

さらに、さまざまなデバイスから収集される多角的なデータが利用できる点も大きなメリットです。PCやタブレットでの閲覧履歴や入力履歴といったデータを通じて、学習者の行動パターンを把握することで、授業の質を向上させたり、より効果的な学習支援のアプローチを構築したりすることが可能です。

ラーニングアナリティクスの始め方

ラーニングアナリティクスは、求められている「個人の最適化された学習の形」を実現します。そこで、まだラーニングアナリティクスを始めてない大学では、どのようにしてラーニングアナリティクスを始めればいいか紹介します。

課題の特定と目的の明確化

ラーニングアナリティクスを導入する際、まず目的の設定が必要です。例えば、東京大学のデータ分析事例では、学習遅れを防ぐことや学生の離脱率低下を目標に掲げ、分析結果を活用しています。具体的には、履修者の進捗を分析し、進捗が遅れている学生に対して早期にサポートを提供する体制を構築することで、履修完了率が15%向上したという結果が報告されています。目的を明確にすることで、データ収集や分析が成果に直結しやすくなります。

データ収集と分析方法の設計

次に、学習管理システム(LMS)やオンライン授業のログデータ、試験結果など、必要なデータを収集し、適切に管理します。東京工業大学では、LMSに蓄積された学習データを活用し、学生の学習状況を把握しています。 データの質と信頼性を確保するため、プライバシー保護やセキュリティ対策も徹底する必要があります。

分析ツールの選定

データを効率的に分析するためのツール選定が重要です。例えば、Re:dash(リダッシュ)は、LMSからのデータを視覚化し、各授業の進捗や学生の理解度を把握しやすくするツールです。また、Tableau(タブロウ)はデータの相関関係や学習パターンを視覚化できるため、理解が難しいと感じる科目の改善点を見つける手助けをします。ある学校では、タブロウを使って科目ごとの成績分布を分析し、難易度に応じて講師のサポート内容を変更しました。

データ活用の実践と教育の改善

最後に、分析結果をもとに教育方法を改善し、学習効果を高めます。九州大学では、ラーニングアナリティクスの結果を活用し、学生の学習行動に基づいた個別の支援を提供しています。 このように、データに基づくフィードバックを行うことで、学生の学習意欲や成果の向上が期待できます。

以上のステップを踏むことで、ラーニングアナリティクスを効果的に導入し、教育の質向上が可能です。

ラーニングアナリティクスの活用事例

世界の取り組み

Signals/パデュー大学(Purdue University)

パデュー大学(英語:Purdue University)は、アメリカのインディアナ州の州立総合大学です。Times Higher Education(THE)社が行っている世界大学ランキングで79位に選ばれている名門大学で、理系と経営学に強みを持っています。

パデュー大学では、世界に先立って2009年から成績や学習への取り組み度、中学校や高校の学歴、学生の特徴などのデータを活用し、 学習データに基づいたアルゴリズムで、学習の成功可能性を信号機のように示す「Signals(シグナルズ)」という予測分析学習システムを、学生用Webページに導入しました。学習管理システム(LMS)における学生データと活動の予測モデリングを使用し、各学生には学習意欲、成績によって「リスクグループ」が割り当てられます。このシステムを使用したコースでは、使用していないコースに比べて学習の継続率が約10%から25%向上し、成績も改善しました。さらに、大半の学生が「やる気が出た」と回答しており、Signalsへの再訪率も向上しています。

Jisc/イギリス

画像引用元:Jisc

Jisc(ジスク:Joint Information Systems Committee)は、イギリスの非営利団体で、高等教育機関や研究機関を対象に、デジタル技術の活用を支援しています。教育と研究の分野でデジタル変革を推進し、イギリスの教育を世界最高基準に到達させることが目的です。特に、ラーニングアナリティクス分野において先進的な取り組みを行っています。2015年に英国の高等教育機関向けに共同開発した学習アナリティクスを提供し、学生のエンゲージメント向上や学習成果の改善を目指しています。

以下が、現在Jiscで行っている主な取り組みです。

学習アナリティクスダッシュボード
学生の学習データを一元化し、教職員が学生の進捗状況を把握
出席管理システム
学生はオンラインや対面の授業に出席した際の出席をとるシステム
学生向けアプリ
学生自身の学習状況の把握
コンサルティングサービス
ラーニングアナリティクスの導入支援

また、Jiscは学習アナリティクスの倫理的・法的課題に関するガイドライン「Code of Practice for Learning Analytics」を策定し、教育機関が責任を持ってデータを活用できるような支援にも携わっています。

参考:国立情報学研究所「海外におけるラーニングアナリティクスの事例紹介
参考:Jisc

日本の取り組み

LAC(ラーニングアナリティクスセンター)/九州大学

画像引用元:九州大学 LAC

九州大学は、日本で最もラーニングアナリティクスを積極的に取り組んでいる教育機関であり、LAC(ラーニングアナリティクスセンター)を設置しています。教育システムの運用や教育データの管理、データ分析・可視化技術の開発、教育・学習改善の支援などのラーニングアナリティクスに関する研究活動を組織的に実践する拠点となり、データに基づく教育・学習の改善に貢献することを目的にしています。

LACには、3つの部門が存在しています。

・研究開発部門
教育と学びを良くするために、新しい学習の分析方法の作成や、その方法をうまく使うための研究をしている部署。そして、研究の成果は日本や世界、学内外の人に向けて発表されています。

・システム運用部門
学習管理システムなどのラーニングアナリティクスを安定して使えるようにしている部署。また、学生が安心して使えるように、学生を支援する組織と協力して、わかりやすい説明書やサポートを提供しています。

・データ管理部門
九州大学で使われている教務システムやシラバスなどのデータを一つにまとめて管理する部門。そして、先生や研究者が学びをより深められるように、データを研究に使える仕組み、ルールを整えています。

九州大学とNTT西日本は、全国にLA教育分野の研究成果や取り組みを拡大するために、2022年4月から広島市立大学でLAのトライアルを実施しています。この取り組みは文部科学省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」にも採択されており、今後の日本の高等教育を支える変革の一つとして大きな役割を担っています。

パナソニックIS ラーニングアナリティクス導入 /東京工業大学

東京工業大学では、パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社(パナソニックIS)と協力し、ラーニングアナリティクスの導入を進めています。この取り組みは、学習管理システム(LMS)「T2SCHOLA(ティーツースカラ)」に蓄積された学習データを分析し、学生の学習意欲をさらに高めることを目的としています。

具体的には、LMSにRe:dashを組み合わせ、学生の動画視聴状況をグラフ化しています。これにより、教員は学生がどの部分を繰り返し視聴しているかを把握し、理解が不十分な箇所を特定して次の授業で補足説明を行うなど、授業内容の改善に役立てています。

このようなデータの可視化と分析により、学生一人ひとりの学習状況に応じた適切な支援を提供し、学習意欲の高い学生をさらに伸ばす取り組みを推進しています。

大学のDX化には予約システムRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

今回は、データアナリティクスを紹介しましたが、このように大学のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を進めるにあたりおすすめなのが、予約システムRESERVA(レゼルバ)の導入です。

RESERVAは、30万社以上が利用する業界トップクラスの予約管理システムです。350以上の業種に対応しており、国公立大学、私立大学など多くの現場でも広く導入されています。このシステムの特徴は、無料プランから始められる手軽さにあります。また、サービス提供(スタッフあり・なし)、施設、宿泊施設、スクール・アクティビティ、イベント・セミナーといった6つの予約タイプに対応し、大学のあらゆる場面に最適な形で利用できます​​​​。

RESERVAは他のサービスとの連携が充実しており、ZoomGoogleカレンダーLINEAkerun(アケルン:スマートロック)といった外部システムとかんたんに連携可能です。これにより、導入の初期段階での抵抗感が少なくなります。RESERVAは予約の失念を防ぐリマインドメールの送信や、オンラインカード決済機能も備えており、無断キャンセルや当日キャンセルを減らします。

予約システムの導入におすすめのRESERVAの詳細はこちらをご覧ください。

まとめ

本記事では、ラーニングアナリティクスを活用した大学のDXを推進する方法を、具体的な事例を交えて詳しく解説しました。大学DXの最初の取り組みとしては、予約システムの導入が有用であり、大学の業務効率化だけでなく、学生の効率的な学習にも効果的です。

RESERVA.acでは、大学のDX化に関する記事を今後も取り上げていきます。

予約システムで、ビジネスを効率化

RESERVA.acは、大学向けのクラウド予約システム。国立大学、学校法人における導入実績は240以上。講義予約、オープンキャンパス予約、証明書発行窓口予約など様々なシーンで導入されています。