大学職員の働き方を変える|RPA導入で単純作業を自動化

大学職員の働き方を変える|RPA導入で単純作業を自動化

大学では、教職員の業務負担の増加が大きな課題となっています。文部科学省の「国立大学法人等人事給与マネジメント改革に関するガイドライン(追補版)」(2021年)をみても、多くの大学が業務効率化を進め、人員不足の補填や人件費削減を目標に掲げていることがわかります。そこで、大学事務にRPAを導入し業務負担、特に単純な事務作業の効率化が期待されています。

本記事では、大学におけるRPA導入のメリットや注意点、実際にRPAツールを導入している大学の事例を交えながら解説します。

RPAの定義

RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、従来人間がコンピュータ上で行う定型業務を自動化する技術です。今まで長時間かけて手入力で行っていた仕事をロボットが記憶し、人間に代わって実行します。このことから、RPAはデジタルレイバー(仮想知的労働者)とも表現されています。そんなRPAが今、人口減少によって労働者不足が深刻化している大学や、「働き方改革」を進めている大学で注目を集めています。

RPAツールは、次のような3タイプに分けられます。

・サーバ型RPAツール:業務を横断した一括管理ができるため大規模な企業・自治体向け。サーバー型は、カスタマイズできるものが多いため、環境にあわせて柔軟に開発できる。セキュリティ面におけるリスクが少ない。
デスクトップ型RPAツール:部門や個人単位での購入ができ、小規模・低価格で導入可能。組織的な管理が不要。
クラウド型RPAツール:自社サーバーが不要のため、イニシャルコストを抑えられる。作業中デスクトップに開き続けなくていいため、パソコンを占拠しない。運用・管理は販売業者に一任できる。

くわしくは以下の記事で紹介しています。

大学において働き方改革が求められる理由

現在、大学は学生の多様なニーズや外部環境の変化に柔軟に対応する必要があり、職員は多岐にわたる業務を担っています。その結果、業務量の増加が課題となっており、効率的な業務遂行が必要とされています。特に、事務作業の簡略化やデジタル化を推進することで、職員の負担が軽減され、業務も効率化します。

また、過度な労働負担は職員の離職率を高め、優秀な人材の流出につながるリスクがあります。こうした状況を防ぐためには、労働環境の改善と柔軟な働き方の導入が欠かせません。職員が働きやすい環境を整えることで定着率が向上し、大学運営の安定化にもつながります。

大学におけるRPA導入のメリット

RPA導入により、大学の業務は大きく改善される可能性があります。

教職員の業務負担軽減による労働環境の改善

定型業務をRPAに任せることで、教職員は本来の教育・研究活動に集中できます。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が行った大学教員らを対象とした意識調査(2024年)では、約8割の教員が研究時間不足と回答しています。その背景に、事務作業で就労時間の約3割を使っていることが挙げられます。事務作業をRPAツールによって自動化すれば、労働時間の削減や必要な仕事に充てる時間が増え、ワークライフバランスの向上にもつながります。

業務のミス削減と効率化

単純作業であっても、慣れや思い込みによって人為的ミスが発生します。RPAツールを利用すれば、人為的ミスが防げ、正確な作業を効率的に進められます。人為的ミスを防ぐことで、仕事でのトラブルが減り、後の対応作業を見越しても業務を大幅に減らせると考えられます。

大学でRPAを導入する際の注意点

RPA導入はメリットが大きい反面、導入時にはいくつかの注意点もあります。

業務の洗い出しと適切な選定

RPAは、ソフトウェアロボットがデジタル上の定型業務を自動で実行する技術です。そのため、すべての業務に適しているわけではありません。RPAによる自動化が向いている業務は次のようなものがあります。

・データ入力や転記作業
・定型メールの送信や集計
・システム間のデータ連携

単純作業ではなく、業務内容が複雑で状況に応じた対応が求められる場合、RPAツールによる自動化は難しくなります。無理に自動化を進めると、RPAシナリオの作成が複雑化し、導入段階でかえって手間が増えてしまうこともあります。その結果、業務効率化を目指して導入したはずのRPAが途中で頓挫してしまうケースも少なくありません。こうした事態を避けるためには、導入前に自動化に適した業務かどうかを正確に見極めることが重要です。

教職員のITリテラシー向上

RPAの導入と運用には、一定のITスキルが求められ、専門知識を持つ人材の確保と育成が重要です。製品によってはプログラミングスキルが必要となり、精度の高い業務を任せる場合は特に不可欠です。

社内にRPAの経験者がいない場合、知識習得やツール選定に時間と手間がかかるため、運用開始までのハードルが高くなります。そのため、専門人材の採用や、学習の機会提供、適切なツールの情報収集が欠かせません。

導入コストと運用体制

RPAを導入する際には、システムの導入費用やコンサルティング会社の雇用費用など、一定のコストがかかります。また、導入初期には業務フローの見直しやシステムの設定に時間が必要となり、一時的な生産性の低下も起こり得ます。

コストに関しては、自治体などが提供する補助金が出る場合があります。そのため、導入前には事前の確認が欠かせません。例えば、経済産業省の「IT導入補助金」や商工会議所地区の「小規模事業者持続化補助金」が挙げられます。運用体制に関しては、長期的な視点で計画を立てる必要があります。

大学におけるRPA先進事例

長崎大学

長崎大学は、オープン株式会社の提供するRPAツール「BizRobo!(ビズロボ)」を活用し、合計436時間の業務削減を実現しました。当ツールは、長崎大学内の教育支援課、学生支援課、人事課、財務管理課、調達課、学術推進課の6部署と、長崎大学病院の総務課、経営管理課、医事課で活用されています。効率化の対象になった業務は50個以上あります。

効率化対象の業務一例

・学生メールアドレスエラー修正通知ロボット
・奨学金休止チェックロボット
・履歴書作成・情報取得ロボット
・科研費申請データ抽出ロボット
・債主登録ロボット
・学内共同利用施設利用料支払いロボット
・小荷物運搬料支払補助ロボット
・HTMLソース作成支援ロボット
・業者別月次請求書など振り分けロボット
・DPC対象外となる高額薬剤及び診断群分類番号抽出ロボット

ツールの開発によって、Webとの連携が可能になります。プログラミングコードがいらないため、研修次第で若いうちから即戦力として働けます。深夜休日問わず動作可能なため、業務受付時間外で大学生が困るといったことも起きません。

岡山大学

岡山大学では、プリントポイントを付与する業務をRPAで自動化しています。プリントポイントとは、岡山大学内の20教室に設置している教育用プリンタで印刷するために必要なポイントで、学生は生協でポイントを購入する必要があります。以前は、生協窓口でポイントを購入した後、情報統括センターが販売情報に基づいてポイントを付与し、学生あてに生協からメールを随時送信していました。

この単純作業の繰り返しをRPA化するため、岡山大学では、業務フローの見直しからスタートしました。整理したフローデータベースやルーチン、エラー処理を設計し、ツール開発に取り掛かり、無事RPAツールの運用開始に至りました。ツールの開発によって、現在年間7,500分(125時間)、約15日分の業務を効率化することに成功しています。

三重大学

三重大学では、支払伝票作成業務をRPAで自動化しています。これまで外部資金の獲得増加に伴い、予算執行時の支払伝票作成件数も増加し、関連する事務業務の負担が大きな課題となっていました。この課題を解決するため、2020年度より職員自らがRPAを構築し、支払伝票作成業務を自動化しました。自動化の結果、年間2,000時間以上の業務削減効果を達成し、業務の大幅な効率化が実現されました。

さらに、この取り組みと成果について各種イベントで発表したことで、三重大学への他機関からの視察やオンライン相談等の実績は40件以上に達しています。三重大学では、構築したRPAフローをパッケージ化し、知財ガバナンス部門によるバックアップ「三重大学モデル」を構築し、他機関への有償提供を計画しています。

早稲田大学

早稲田大学は財務業務の効率化を目指し、ルーマニアで創業したRPAツール「UiPath(ユーアイパス)」を導入しました。Uipathは、世界中で4,000社以上に導入されており、日本国内においても金融機関や自治体などを中心に1,000社以上で導入されています。このツールにより手作業の削減、時間短縮、ミスの削減が実現し、財務部門の生産性と業務品質が向上しました。RPA導入後は、人手を必要とする反復作業が効率化され、戦略的な業務へリソースを振り分けられるようになりました。これは、大学経営の効率化と「Waseda Vision 150」の目標達成に大きく貢献しています。

2018年4月に稼働した支払業務の自動化では、すでに64.7%(年間40,048時間)の業務削減を実現しました。これ以降、AIによる勘定科目類推機能の組み込みも追加され、支払い業務だけでもさらに数千時間の効率化効果を実現する見込みです。

明治大学

明治大学では、オムニバス授業(一つの講義を担当者が複数名で引き続いて行う科目)で発生する謝金の支払い業務の効率化のため、NTTアドバンステクノロジ株式会社のサーバー型RPAツール「WinActor(ウィンアクター)」を導入しました。ウィンアクターでは、人がWindows PCで行っている業務の手順を「シナリオ」として記憶し、同じ操作を何回でも繰り返し実行することができます。

RPA化を図ったのは、Excelデータを財務会計システムに伝票起票する作業で、繰り返しおこなう単調な業務です。この単調な業務100件で約500分かかっていましたが、RPA化によって約45分で処理することに成功しました。導入後は、ボタンを押すだけで良くなり、処理中はほかの業務を進められるため、有効的に時間を使うことができます。

大学DXには予約システムRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

今回は、事務作業効率化を実現するRPAツールを紹介しましたが、このように大学のDX推進の際におすすめなのが、予約システムRESERVA(レゼルバ)の導入です。RPAツールと並行して活用することで、事務作業を一層効率化し、業務負担のさらなる軽減につながります。

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RESERVAは他のサービスとの連携が充実しており、ZoomGoogleカレンダーLINEAkerun(アケルン:スマートロック)といった外部システムとかんたんに連携可能です。これにより、導入の初期段階での抵抗感が少なくなります。RESERVAは予約の失念を防ぐリマインドメールの送信や、オンラインカード決済機能も備えており、無断キャンセルや当日キャンセルを減らします。

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まとめ

今回は、大学教職員の事務作業を円滑に進めるRPAツールを紹介しました。

大学職員の仕事は、教育や研究だけでなく、繰り返し行われる事務作業に多くの時間を割いています。RPAツールの導入で、単純作業の繰り返し業務を自動化し、削減することで、本来時間を割きたい研究などの時間を捻出できるため、仕事の効率化を進め、ワークライフバランスの向上に努めることができます。RPAは職員の負担の軽減だけでなく、大学の教育水準の向上にも貢献します。

業務のデジタル化推進を進めたいと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
RESERVA acでは、今後も大学DXの先進事例をお届けします。

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