近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、ビジネスの世界をはじめ、行政、医療など幅広い業界で広がりを見せており、教育の現場においても急速に推進されています。このような中で、大学に足を運ばなくてもインターネットを利用して参加できる「オンラインオープンキャンパス」が注目されています。パソコンやスマホがあれば、場所を問わずどこからでも参加できるため、移動にかかる時間や交通費を節約しつつ効率的に情報を集められ、人気を博しています。
本記事では、オンラインオープンキャンパスの概要、メリットや課題、そして、実際に取り組みを行っている大学の事例などを踏まえて、その意義について考察します。
オンラインオープンキャンパスとは

オンラインオープンキャンパスとは、PCやスマートフォンなどの端末を介した参加が可能な、インターネット上で行われるオープンキャンパスのことです。オープンキャンパスは単なる見学ではなく、学生自身がその大学に行くかどうかを決めるための大切な機会となります。志望校を決める理由は人それぞれであり、中には大学のパンフレットやウェブサイトなどを見て、雰囲気で判断する人もいます。しかし、実際に自分の目で大学のキャンパスを見たり、教員による講義を受講したり、在学生と交流したりすることで、その判断が変わる可能性があります。また、自分が本当に学びたい分野が明確になるきっかけになることもあり、学生の人生を左右する重要なイベントと言えます。
さらに、オンラインオープンキャンパスでは大学の説明にとどまらず、ライブ配信の体験授業や個別相談会、VR技術を使用したキャンパスツアーなど、多様なプログラムが用意されているため、現地に足を運ぶことなくさまざまな角度から大学への理解を深められます。
オンラインオープンキャンパスのメリット
オンラインオープンキャンパスは、通常のオープンキャンパスとは異なるメリットを複数有しています。以下に、主なメリットを3点紹介します。
どこからでも参加できる
オンラインオープンキャンパスの最大のメリットは、自宅をはじめとしたあらゆる場所から参加できることです。以前は、遠方にある大学のオープンキャンパスが気になったとしても、金銭的な面で気軽に参加できないといった問題がありました。しかし、オンラインであれば交通費が一切かからないため、これまで困難だった遠方の大学のオープンキャンパスにも気軽に参加できるようになり、学生の選択肢拡大に大きく貢献します。
効率のよい情報収集が可能
オンラインオープンキャンパスの場合、現地までの移動が必要なく、学生の時間や体力が削られないため参加のハードルが下がります。また、予定の立て方次第では、1日で複数の大学のオープンキャンパスに参加できるというメリットがあります。さらに、ZoomやYoutube上でのトークライブや説明会の中で、チャットですぐに質問できるため、確実に疑問点を解消できます。
自分のペースでじっくりと参加できる
オンラインオープンキャンパスにおける大学の説明は、ライブによるリアルタイムのものだけではなく、アーカイブ動画の形式であることも少なくありません。そのため、一度聞いただけでは理解できなかった場合や再度聞きたいと思った際に、繰り返し動画を視聴することが可能です。これにより、学生は大学への理解がより深まり、ミスマッチの防止にもつながります。
また、保護者同伴で参加できるオンラインオープンキャンパスも多く、中には保護者向けのプログラムが用意されている場合もあります。保護者もオープンキャンパスに参加できることで、親子で進路について具体的に話し合う機会を持つことができ、保護者は親の目線で助言ができるため、より多様な視点での進路選択が期待できます。
オンラインオープンキャンパスの課題
オンラインオープンキャンパスは、学生にとって非常に多くのメリットがあるものの、わずかながら課題も抱えています。
実際の雰囲気とは異なる場合がある
大学は、オンラインオープンキャンパスにおいて、現地に足を運ばなくとも、VRを活用したバーチャルキャンパスツアーや個別相談会といった施策で、大学の魅力や雰囲気を学生に存分に伝えようと工夫しています。しかし、学生がキャンパスや学べる学問などに対して漠然としたイメージで捉え、わかった気になってしまうことや、大学側が自校の説明などの際に、言葉選びを誤り、誤解を生んでしまうことも起こらないとは限りません。このような場合、実際の大学の雰囲気や姿と学生の大学に対する認識との間に、ずれが生じる恐れがあります。
モチベーションの低下
オンライン上であっても、憧れの大学のオープンキャンパスに参加することは、受験勉強や志望校合格のモチベーションを大きく高めてくれるものです。しかし、実際に現地に訪れてキャンパスの雰囲気を味わうことに比べると、人によっては物足りなさを感じ、モチベーションが大きく上がらないケースも考えられます。また、オンライン上でオープンキャンパスの説明や動画を長時間視聴することは、集中力が途切れる恐れもあり、積極的に質問を受け付けたり、相互に意見交換ができる仕組みを構築したりするなど、大学側には工夫が求められます。
大学におけるオンラインオープンキャンパスの事例
千葉大学

千葉大学では、「千葉大学WEBオープンキャンパス」という特設ページを用意し、各学部の紹介動画や模擬講義、大学概要説明、キャンパスツアー動画など、充実したオンラインオープンキャンパスを実施しています。特に模擬講義では、44名にも及ぶ教員の講義を受講できるため、学生は自身が興味のある学問をオンライン上で体験でき、千葉大学で何を学べるのか理解できます。また、VRキャンパスでは本学の有する2つのキャンパスをリアルにCG再現しており、ネットを通じて360度見渡せるバーチャル空間でキャンパスの雰囲気や構造を知ることができます。
参考:千葉大学「Webオープンキャンパスサイト」
明治学院大学

明治学院大学は、オンラインオープンキャンパスの特設サイトを公開しており、キャンパスのバーチャル体験やミニ講義の体験、学部・学科の紹介などのさまざまなコンテンツを用意しています。中でも、「明学生との個別相談を体験してみよう」というコンテンツは、Youtube上で17学科の在学生が各学科の魅力を語り、明学生と個別相談をしているかのような体験ができます。在学生による生の声を聞けるため、大学の雰囲気を理解するのに役立ちます。
参考:明治学院大学「オンラインオープンキャンパス」
岐阜大学

岐阜大学は、オンラインオープンキャンパスのサイト上で、大学紹介からキャンパスの施設紹介、学部ごとの専用サイトによる詳細な紹介、過去問をはじめとした入試情報、詳しい交通アクセス情報など幅広い角度から大学について知ることができる工夫を行っています。また、キャンパス周辺の飲食店や公共施設の位置を示したマップも確認することができ、オンラインオープンキャンパスの課題である「現地に足を運べず、キャンパス周辺の雰囲気をつかみにくいこと」に対して有効な施策と言えます。マップに加えてGoogleストリートビューも用意するなど、学生に対して丁寧な案内となっており、現地に赴かないオンラインオープンキャンパスであっても安心して志望できます。
参考:岐阜大学「WEBオープンキャンパス」
参考:岐阜大学「大学の周辺環境」
大学DXにおける予約システムRESERVAの活用

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まとめ
DXが進む教育現場では、オンラインオープンキャンパスが学生の進路選択の幅を広げるだけでなく、大学の認知向上や学生確保における重要な場となっています。オンラインオープンキャンパスには、学生が場所を問わずに参加でき、時間や交通費を削減できるといったメリットがある一方で、認識のずれやモチベーション低下などの課題も存在します。こうした課題を克服するため、大学側には、オンデマンド配信とライブ型を組み合わせる、在学生とのコミュニケーションの場を設ける、キャンパスの中をバーチャルに体験できる仕組みづくりなどといった工夫が求められます。
今後は、各大学が各々の理想とする在り方や求める学生像、時代の流れに合わせてよりよい方法を探りながら、オンラインオープンキャンパスをはじめとするDX施策に取り組むことで、国内における教育のさらなる質の向上が期待できます。