2021年6月21日、新型コロナウイルスワクチンの「職域接種」が本格的に開始しました。「職域接種」とは、新型コロナウイルスのワクチン接種の加速化を目的に、企業や大学などの職域単位で行われるワクチン接種を意味します。職域接種は「職場接種」や「大学拠点接種」とも呼ばれ、6月21日の17時時点で、累計3795会場、1464万人分の申請があったことが報道されました。
職域接種を実施している企業や大学などの中には、さらにワクチン接種効率を上げるために、独自の取り組みを行っている団体があります。また、職域接種は通常1000人以上の規模でないと実施できません。日本の99%以上を占める中小企業は職域接種をどのように行っているのでしょうか。
本記事では、大手企業や中小企業、大学、そして自治体の職域接種で実際に行われているワクチン接種率向上のための取り組みについて紹介します。
大手企業の取り組み
国際興業
国際興業は、企業・大学などの職域接種の円滑な運営を支援するために、全国のバス会社5社と連携すると発表しました。この連携では、下記の5つのサービスが提供されます。
・シャトルバスの運行
・中長距離の社員輸送
・産業医、看護師、スタッフの巡回送迎
・接種会場や接種前後の待機場所としての大型観光バスの提供
・誘導・案内スタッフとしてのバスガイドなどの派遣
6社の主たる事業エリアである東京、埼玉、大阪、兵庫、山梨、静岡、青森、秋田、岩手、宮城などで提供されます。6社は、低迷する観光需要を早期に回復させるためにも、国内のワクチン接種率の向上に少しでも貢献していく姿勢を見せています。
日産自動車
日産自動車では、2021年6月23日から職域接種が開始し、当日にはおよそ550人が新型コロナウイルスワクチンの接種を受けました。接種会場には、自動車製造の効率化などを担当する職員がタイムキーパーとして従事しており、会場で接種を待つ人が滞留を起こさないように、時間の厳格な管理を行います。さらに、接種会場は自動車工場と同じように、矢印に沿って受付からワクチン接種まで一筆書きのルートになっているため、接種の手順を間違えることなくスムーズにワクチン接種を実施できます。このように同社は、自動車製造の経験を基に、効率的なワクチン接種を実現しています。
伊藤忠商事
伊藤忠商事は、接種を行うほかの企業の参考にしてもらうために、同社の接種会場を公開しています。2021年6月22日には、企業の職域接種を支援する医療機関の関係者が見学に訪れました。商社の担当者が会場を案内しながら、会場内での感染対策や職域接種の運営上の注意を説明します。さらに、伊藤忠商事は公式サイトで会場のレイアウトや接種実績のほか、同社における職域接種で発見された課題や改善点なども公開しています。
ビジョナリーホールディングス
メガネスーパーなどを子会社にもつビジョナリーホールディングスでは、2021年6月21日から職域接種を開始し、6月25日には希望した社員・家族の接種を完了見込みと発表しています。また、同社は6月26日より、職域接種が受けられない中小企業や個人事業主を主な対象とした取引先に対し、可能な限り多くのワクチン接種機会を提供することを決定しました。ビジョナリーホールディングスにおける職域接種は7月11日まで行われ、今後も新型コロナウイルス感染拡大の早期終息に向けて、行政や関係機関と連携を図る予定です。
中小企業の取り組み
職域接種は、1000人以上の接種規模を集められる企業より開始されます。つまり、日本の大部分を占める中小企業は職域接種をすぐに実施できません。そこで投資ファンドやベンチャーキャピタル(VC)などは、規模の小さい企業における職域接種を支援するため、投資先や顧客の企業の従業員とその家族を対象に合同での集団接種を実施する取り組みが行われています。
Coral Capital(コーラルキャピタル)
Coral Capitalは東京都千代田区のVCで、中小企業における職域接種の支援をいち早く行っている企業です。職域接種に賛同するVCやスタートアップ企業に声をかけたところ、約1100社が集まり、およそ1800人だった希望者は2万5000人を超える規模になりました。同社の出資先には医療関連企業があり、打ち手やスペースは確保済みです。2021年6月21日から職域接種を開始し、全22日の日程で2万5000人分のワクチン接種を行う予定です。
F Ventures(エフベンチャーズ)
福岡県福岡市に本社を置くVCであるF Venturesも、スタートアップ企業の職域接種を支援しています。同社は元々、Coral Capitalの取り組みにパートナーVCとして参加し、東京都内に拠点を構える投資先の接種希望者の取りまとめを行っていました。その後、福岡市内でもスタートアップ企業向けにできることはないか議論を重ねました。議論の結果、F Venturesの投資先であり、クリニックを運営しているInazma(イナズマ)と協力し、福岡市内スタートアップ企業向けの合同職域接種の実施を決定しました。2021年6月8日時点で、市内の複数の広告代理店や保険会社などが参加を予定しており、今後も希望企業を募りながら、1カ月に数回のペースで1000人規模の接種が計画されています。
エフピオ
社会保険労務士法人エフピオは、200社を超える企業クライアントを中心に、職域接種を希望する中小企業を募集し、会社規模を問わずワクチン接種を受けられるようにする取り組みを始めました。大手企業の職域接種が進む一方で、中小企業が取り残されている状況だったため、複数の企業による合同での職域接種の実施に至りました。2021年6月14日から募集を開始し、当初予定していた5000人を上回る41社、約7400人の申し込みがあったと報道されています。エフピオはすでに国に申請を行い、同年7月から職域接種を開始できるように準備が進められています。
大学の取り組み
関西大学
関西大学は2021年6月21日より、大学拠点接種を行っています。同大学では、学生の接種率向上のために、ワクチン接種を行った学生に大学近くの商店街で使用できる500円分の商品券を配布しています。コロナ禍で打撃を受けている商店街の活性化のために、大学や学生の保護者から提案されました。関西大学は学生の約半数が大学拠点接種の希望アンケートに回答していないことを危惧し、ワクチン接種への学生の意識向上も期待して、この取り組みを行っています。
日本体育大学
日本体育大学も2021年6月21日より大学拠点接種を開始した大学のひとつです。日本体育大学では、学生・教職員を含む7500人分の新型コロナウイルスワクチンを用意していましたが、調査を行ったところ870人が接種しないと回答しました。そこで大学はワクチンを無駄にしないため、地元商店街の住民にワクチン接種の機会を提供しています。日本体育大学は、1日当たり750人のペースでワクチン接種を進め、7月末までに2回目の接種を完了する予定です。
名古屋大学や名古屋工業大学など
名古屋大学・名古屋工業大学、名城大学、中京大学、南山大学、豊田工業高等専門学校の5大学1高専は2021年6月24日、共同で新型コロナウイルスのワクチン接種を実施すると発表しました。医学部を持つ名古屋大が「地域の学生の接種率を上げ、学生に1日も早く安心して学校に通えるようになってほしい」との思いから近隣大学に声をかけ、共同での大学拠点接種を行います。名古屋大学医学部などの医師や看護師がワクチンの打ち手となり、1日の接種人数は1000人から1500人を見込んでいます。
自治体の取り組み
高知県
高知県は2021年6月25日、新型コロナウイルスワクチンの職域接種の実施などを支援する「職域接種支援チーム」を立ち上げました。国への申請に向け、職域接種の相談や会場運営などを支援します。チームは6人体制で、県の健康対策課内のワクチン接種推進室が担ってきた職域接種の支援や、県が7月中旬から実施予定の県営接種会場の準備などを引き継ぎ、業務を行います。大規模接種の運営経験者をアドバイザーとして接種会場へ派遣する支援も検討されています。
岐阜県岐阜市玉宮地区
岐阜市の繁華街である玉宮地区をエリアに含む岐阜駅北地区自治会連絡会は、7月中旬に、同地区の飲食店・ホテルの従業員やアルバイト、パート、家族を対象にした新型コロナウイルスワクチンの職域接種を行います。また、ワクチンの打ち手は白木耳鼻科クリニックの医師やスタッフで、接種場所も同クリニックの入るビルを予定しています。
感染拡大に伴う県による時短や酒類提供の自粛要請で、玉宮地区の飲食店の多くは売り上げが低迷しています。同連絡会は職域接種を行うことで、地区のワクチン接種率を向上させるとともに、「安全な街」をPRし、新型コロナウイルス以前の元気な街を取り戻そうとしています。
東京都墨田区
墨田区では、2020年12月に接種の準備を始めた当初から、選挙管理委員会の職員4人にワクチンの担当を兼務させ、投票のための入場整理券の準備や会場の調整などのノウハウを接種券の準備や接種会場の調整に活かしています。また、区民に対してSNSを利用し、ワクチン接種予約の空き状況などを発信することで、できるだけワクチンを無駄にしないようにしています。さらに、救急救命士を対象にワクチン接種の研修会を行い、ワクチン接種の打ち手を増やそうとする取り組みも行われています。
愛知県豊田市
愛知県豊田市は2021年4月27日、トヨタ自動車・ヤマト運輸と新型コロナウイルスワクチンに関する三者連携協定を結びました。この協定により、ヤマト運輸によるワクチンの安全性を重視した超低温帯での輸送の仕組みや、トヨタ自動車による接種会場の効率的運営支援や接種スタッフ等の派遣協力などが提供されます。民間企業の技術力や人材との共働による「豊田市モデル」として進め、5月30日から運用を開始しています。また、トヨタ自動車は関係施設4か所を集団接種会場に提供するほか、産業医や看護師など合わせて約450人と会場運営スタッフを集団接種会場に派遣協力も行います。
予約システムで職域接種をさらに効率化!
職域接種・大学拠点接種を効率化するために、多くの企業や大学などで広く利用されているサービスがオンライン予約システムです。従業員や学生からの予約を円滑に管理でき、業務負荷を軽減します。RESERVAのコロナワクチン予約システムは、180超の自治体、医療機関、クリニック、企業、大学などで稼働中で、もちろん職域接種にも対応しています。接種回数の管理、接種間隔の管理、ワクチンメーカー別の管理、社員証IDでのログイン機能など、ワクチン接種に必要な機能をすべて搭載しています。また、大切な個人情報を守るため、すべての情報登録シーンにおいてSSLを導入しているため、セキュリティは万全です。さらに、当社のコンサルタントがヒアリングし、最適なシステム構成を提案することも魅力の1つです。SaaS型の予約管理システムのため、ご相談をいただいてから最短3営業日でシステムを提供することが可能です。
まとめ
今回は、大手企業や大学、自治体の職域接種・大学拠点接種で実際に行われている新型コロナウイルスワクチンの接種率向上に向けた取り組みを紹介しました。企業や自治体が連携し、業務を分担することでワクチン接種を効率よく進められます。また、業務の経験をワクチン接種の運営に活かす企業や接種会場を公開してほかの団体のワクチン接種の効率化を支援する企業も存在します。多くの団体ではワクチン接種の予約に予約システムを導入することで、予約管理を効率よく行うことができ、円滑なワクチン接種を実現できます。
RESERVA Digitalでは、このほかにもRESERVA予約システムに多数実装されている便利な機能の紹介や、地方自治体の新型コロナウイルスワクチン接種状況、本記事で紹介できなかった大手企業・大学のさらなる取り組みなど、幅広い記事を随時配信しているので、合わせてご覧ください。
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