大学が運営する宿泊施設は、大学関係者や学外の研究者、学会・イベント参加者、スポーツ大会での合宿利用者など、幅広い利用者が訪れる重要な拠点です。こうした宿泊施設では、予約の受付から管理、利用者への案内やアフターフォローに至るまで、多くの業務が発生します。しかし、申込用紙や予約台帳のようなアナログな方法を用いて予約を管理しているケースが多く、予約情報が煩雑化し、予約の重複や漏れなどのヒューマンエラーが起こりやすいという課題があります。特に、研究者や学会参加者の滞在が集中する時期や、スポーツ大会が開催される時期には多くの利用希望が重なるため、限られた部屋数やスタッフリソースの中で効率よく管理を行うことは容易ではありません。
そこで注目されているのが、予約台帳のシステム化です。これは紙媒体での管理をやめ、Webシステムやクラウドツールなどを導入することで情報を一元管理し、予約フローを効率化する方法を指します。DX(デジタルトランスフォーメーション)が大学にも波及する中、宿泊施設や会議室、実験施設など、あらゆる施設予約のデジタル化が必要とされています。
本記事では、大学の宿泊施設における予約をシステム化することによって得られるメリットや、具体的な導入事例などを解説します。
大学の宿泊施設と予約管理の課題
大学の宿泊施設とは
大学の宿泊施設は、学生寮のほかに研究者や学外利用者向けのゲストハウスや宿泊施設なども含まれ、学会やセミナー、合宿、共同研究、留学生受け入れなど、大学が行うさまざまな活動を支える重要なインフラとなっています。こうした施設はキャンパス内や近隣に位置していることが多いため、学内での活動やイベントにすぐに参加でき、移動にかかる時間とコストを削減できる点が大きなメリットです。また、一般的なホテルと比べて宿泊費が安価に設定されているケースが多く、長期滞在や研究費の節約にも有効です。
一方で、大学の宿泊施設は一般のホテルや旅館と異なり、「研究目的での来訪者のみ宿泊可能」「教職員の紹介が必要」「学内手続きが必要」など、一定の利用目的や施設の利用条件がある場合が多いです。そのため、予約台帳をシステム化して一元管理を行わない限り、紙ベースでの管理では対応しきれない複雑さが生じます。
予約管理の現状と課題
大学の宿泊施設の予約管理において、紙の台帳を使って手動で情報を書き込む方法を採っている施設は少なくありません。しかし、特に電話やメールでの問い合わせ・予約が集中する繁忙期には複数の担当者が同時に作業をすることもあり、手入力のミスや更新漏れが起こりやすくなります。また、情報がリアルタイムに共有されにくく、紙の台帳や特定のパソコンだけに保存したファイル等では、学内の別部署や離れたキャンパスからのアクセスが難しく、状況を確認する問い合わせをしなければなりません。
さらに、紙の台帳では変更履歴を追うことが難しく、万が一トラブルやクレームが発生した際に、いつ誰がどのような操作をしたのかを正確に把握するのが困難になります。オンラインのシステムであれば、予約やキャンセルの履歴が自動的に記録され、管理者が適宜チェックすることで問題を早期に発見・対処できる可能性が高まります。
このような現状と課題を考えると、大学の宿泊施設における予約台帳のシステム化は急務と言えます。
予約台帳のシステム化とは?
大学の宿泊施設予約をデジタル化するにあたって注目されているのが予約システムの導入です。これは紙で行っていた予約台帳の役割をデジタルに移行し、スタッフや利用者がオンラインで予約や空き状況を確認できる仕組みを指します。
予約システムの特徴として、第一に「情報の一元管理」が挙げられます。従来、部署ごとや施設ごとに管理していた予約情報や利用者情報を一つのプラットフォームで扱うことができるため、重複予約や情報漏れを大幅に削減します。これにより、スタッフはいつでも最新の予約状況を把握でき、問い合わせがあった際にも迅速かつ正確に対応できます。第二に、予約受付からキャンセル・変更、チェックイン・チェックアウトなどのフローを自動化できることが挙げられます。利用者がWebフォームやポータルサイトを通して空き状況を確認し、そのまま予約できるシステムを整えれば、メールや電話対応の手間が激減します。
さらに、予約システムに搭載されているデータ分析機能を活用できる点も大きなメリットです。システム上に蓄積された予約データをもとに、利用者の国籍や所属、利用日時、滞在期間などを集計し、利用傾向を可視化することができます。紙の台帳では時間と手間がかかっていた分析作業も、システムならボタン1つでレポートを生成できる場合が多いです。
予約台帳のシステム化によるメリット
予約台帳をシステム化することで得られるメリットは大学側・利用者側の双方にあります。
大学側のメリット
- 業務の効率化・コスト削減
紙ベースによる管理に比べて、予約受付から確認、キャンセル・変更対応などの作業が大幅に簡略化されます。電話やメールでのやり取りが減るため、スタッフの負担が軽減し、残業や人件費の削減につながります。 - 予約情報の一元化とミスの防止
システム上で予約データを一元管理すれば、リアルタイムに更新される情報を複数のスタッフが同時に閲覧できます。その結果、重複予約や入力ミスのリスクが下がり、内部統制の強化にも寄与します。 - 分析・レポート機能による運営改善
予約データが蓄積されることで、施設の稼働率や利用者属性などをかんたんに分析できます。学会シーズンに合わせたキャンペーンや、特定の時期の宿泊プラン見直しなど、データに基づく改善が可能になります。 - 運営の信頼性向上
システム化により、予約の受付や変更、キャンセルなどの履歴が自動で記録されるため、トラブル発生時の原因究明が容易になります。利用者への対応履歴も残せるため、クレーム対応や問い合わせにも迅速に対処でき、大学の信頼性向上につながります。 - セキュリティとデータ保護
予約システムの導入によってセキュリティやバックアップ体制が整うと、データ保護の観点でも安心です。大学の機密性が高いデータや個人情報にも適切なアクセス権限を設定できるため、情報漏えいのリスクを大幅に減らします。
利用者側のメリット
- 24時間いつでも予約できる
学会やイベント、研究活動のスケジュールは国内外問わず多岐にわたります。オンライン化されたシステムを使えば、利用者は時差や休日を気にせず予約ができるため、利便性が格段に向上します。 - リアルタイムの空き状況確認
システム上で最新の空き状況が随時更新されるため、「部屋が本当に空いているのか分からない」「問い合わせ後に他の人が予約してしまった」という混乱を減らせます。また、団体利用の場合でも、チームの人数や日程に合わせて適切な部屋を即座に見つけられるのは大きなメリットです。 - 予約手続きの簡素化
紙の申請書を取りに行く必要がなく、Web画面上で必要事項を入力すれば予約が完結します。キャンセルや変更もかんたんにでき、やり取りのミスを減らすことができます。 - 透明性と安心感
システム上で予約履歴や請求情報、利用ルールなどが明示されていれば、利用者はいつでも自分の予約状況を確認できます。予約の手続きが正しく完了しているか、料金に不明点がないかを自分で確認できるため、トラブルを未然に防げます。 - 複数言語・多通貨対応
国際学会や海外からの研究者が利用する場合、多言語表示やオンライン決済が可能なシステムは大きな強みです。海外の利用者にとっては、英語や母国語で予約手続きを行えることで心理的ハードルが下がり、大学の国際化にも寄与します。
このように、予約台帳のシステム化は大学側の業務効率化と、利用者側の利便性向上を両立させる非常に有効な施策と言えます。
予約システム導入の課題と対策
システム導入のコストと予算の確保
大学にはさまざまな予算枠が存在しますが、新規システム導入の費用をどこから捻出するかが大きな課題となる場合があります。年度ごとの予算を組んで計画的に導入を行ったり、複数の委員会や会議を経て承認を得たりすることが必要です。
近年、多くの大学では情報システム部門やDX推進部門があり、デジタル化の予算をまとめて管理している場合があります。そこに相談し、他の部門との共同プロジェクトとしてシステム導入を行うことで、費用負担を分担したり、学内調整の手間を減らしたりすることも有効な手段です。
利用者への周知と定着
予約システムを導入しても、利用者やスタッフがその存在を知らなかったり、操作方法を十分に理解していなかったりすれば、結局電話やメールでの予約が続いてしまい、システムが形骸化する恐れがあります。特にデジタルが苦手な教職員や年配の利用者が多い場合、オンライン予約への抵抗感を示す人もいるでしょう。
そのため、システムのメリットや使い方を分かりやすく示したチュートリアルやマニュアルを作成したり、説明会を開催したりするなど、導入ハードルを下げる工夫が必要です。加えて、利用者がシステムを使用するメリットを強調すると、少しずつオンライン予約が広まっていきます。
予約管理システムの導入事例
國學院大學
國學院大學の厚生寮(叢隠寮)は、故折口信夫(釈迢空)博士の別荘であった叢隠居を昭和33年に大学が譲り受け、保存、増築された宿泊施設です。当初は教職員の厚生施設でしたが、平成14年から卒業生の利用も可能となりました。施設の正面には富士山、付近にはススキで有名な仙石原、大涌谷、箱根駅伝往路ゴール場所である芦ノ湖など見所もたくさんあります。また、寮には良質な温泉があり、四季折々に変化する自然の中にある快適な保養所となっています。
予約サイトは2種類の部屋タイプから選択でき、希望のチェックイン・チェックアウトの日程と宿泊人数を選択できます。空き状況は、月ごとのカレンダーに宿泊料と空き状況を示す〇✕アイコンが表示され、一目で予約状況がわかるようになっています。
参考:https://www.kokugakuin.ac.jp/student/lifesupport/p9
宿泊予約に使われていた予約ページ:https://reserva.be/kokugakuin
九州大学
九州大学の西新プラザは、九州大学における国際学術研究の推進および社会連携の促進を図るとともに学術研究活動等の情報を発信し、九州大学の教育研究活動の促進に資することを目的として設立された施設です。1階が情報発信、2階が会議、3階が研修の、3要素で構成されています。九州大学の多様な研究交流と情報発信の場として重要な役割を担っています。
この施設を使用する場合は、サイトで予約状況を確認の上、予約希望日をクリックし、仮予約フォームより登録します。その後、仮予約完了メールを受け取り、「九州大学西新プラザ使用願」を送付することで予約が完了します。
大阪大学
大阪大学では複数の宿泊施設を保有しています。教職員や学生・留学生、学外者による会議、打ち合せ、小規模のセミナー等の集いの場として利用できる職員会館や、関係者の短期滞在が可能な春日丘ハウスなどが設置されています。国際交流会館では、在館者の参加を対象とした地域ボランティアによるウェルカムパーティ、盆踊り大会、民族衣装を着る会、クリスマスパーティ、雛祭りなどが開催されています。
宿泊施設の運営には予約システムRESERVA
大学における宿泊施設の運営におすすめの予約システムであるRESERVA(レゼルバ)は、国内シェアトップクラスの実績を誇るクラウド型予約管理システムです。業界・業種問わずあらゆるビジネスに対応しており、350種類以上の業態で利用されています。PC・スマホ・タブレットに対応しており、最短3分で予約システムを作成できます。管理画面もシンプルでわかりやすく、サポート体制も整っているため、はじめての予約システムに最適です。また、ISO/IEC 27001やISO/IEC 27017を取得しており、SSLに対応しており、堅牢なセキュリティ対策が施されています。
また、RESERVAは、予約受付や顧客管理をはじめとする多くの機能がフリープランから利用可能で、宿泊施設の運営に役立つ機能が豊富に備わっています。RESERVAの多言語設定機能は、日本語を含めた6か国語に対応しており、留学生への予約受付も自動化できます。また、オンラインカード決済は、予約者が予約と同時に支払いまで完了でき、宿泊当日はスムーズにチェックイン処理を行えるほか、従業員も支払いにかかる手間が減り、業務効率化が期待できます。このように、大学による宿泊施設の運用を効率化するためには、RESERVAを導入することが効果的です。
宿泊施設の予約管理を快適にする予約システムRESERVAの詳細はこちらからご覧ください。
まとめ
大学の宿泊施設には、研究者や学会参加者、スポーツ大会の合宿利用者など、多様な利用者がさまざまな目的で訪れます。そこで予約台帳をシステム化することで、予約の受付からチェックイン・チェックアウト、支払い、アフターサービスに至るまで、利用者との接点がシームレスにつながり、より豊かな大学生活や研究活動をサポートできます。さらに多言語対応、空き状況一覧機能などを活用すれば、大学側の運営効率が大きく改善されるだけでなく、利用者の利便性も飛躍的に向上します。特にRESERVAは、操作性が高く、宿泊施設の予約に適した機能が充実しているため、オススメの予約システムです。
RESERVA acでは、大学のDX化に関する事例を今後も取り上げていきます。