大学におけるチャットボットの導入効果とは|先行事例を交えて詳しく解説

近年、少子高齢化や人手不足が深刻化する中で、大学の事務職員だけでは対処しきれないほどの業務量が問題となりつつあります。そこで注目されているのが、AIや自然言語処理技術を活用して問い合わせ対応を自動化する「チャットボット」の導入です。単純な質問への回答や学内制度の案内などはチャットボットに任せることで、教職員はより重要な業務や個別サポートに時間を割くことができます。

本記事では、大学におけるチャットボット導入のメリットや具体的な手順、導入効果を高めるポイントを先行事例を交えながら解説します。

チャットボットとは

チャットボットとは、人間の代わりに自動で会話応対を行うプログラムのことを指します。主にAIや機械学習などの技術が組み込まれており、ユーザーとのテキストベースや音声ベースのやり取りを可能にします。

大学においては、学務情報や入試情報、よくある質問(FAQ)への回答など、さまざまな問い合わせに自動応答するシステムとして注目されています。たとえば「履修登録の手順が知りたい」「図書館の開館時間は何時までか」といった日常的な問い合わせを即時処理できるため、学生や教職員双方の負担を大幅に軽減する効果が期待できます。近年は、自然言語処理技術が進歩したことで、人間の会話に近い文脈理解が可能になり、従来よりも高度な運用が実現しています。

チャットボットを大学に導入するメリット

職員の負担を軽減

大学では、学生や受験生、保護者などから寄せられる問い合わせが多岐にわたるため、事務職員が対応する業務量は膨大です。問い合わせの内容は、学事スケジュールや入試関連の手続き、奨学金、施設利用など、同じ内容の質問が繰り返されるケースが多いです。ここでチャットボットを導入すれば、基本的な質問への回答を自動化できるため、職員はより専門的な相談や高度なサポート業務に集中できます。

学生の利便性向上

チャットボットが導入されると、学生は24時間いつでも気軽に問い合わせを行えるようになります。

授業が終わった深夜や土日など、大学の窓口が閉まっている時間帯でも、履修関連や施設の利用方法などを即座に確認できる点は大きな魅力です。とくにオンライン授業の増加によって、物理的なキャンパスに足を運ぶ機会が減った学生にとって、迅速なサポート体制は学習意欲の維持にも寄与します。

また、海外からの留学生に向けて多言語対応のチャットボットを運用すれば、言葉の壁を低くする効果も期待できます。結果として、学生の満足度や利便性が高まり、大学全体のブランドイメージ向上にもつながります。

一貫した情報の提供

チャットボットを活用することで、問い合わせへの回答の一貫性を図れます。

大学では複数の担当部署が存在し、問い合わせ内容によっては回答が異なるリスクがありますが、チャットボットに統一したFAQデータベースを持たせておくことで、常に同じ情報を提供できます。また、学内でルールや手続きが更新された場合でも、一度データを修正すれば、学生全員に最新の情報を行き渡らせることが容易になります。これにより、利用者が混乱することなく手続きや学習計画を進められるため、学内のコミュニケーションコストが削減されます。さらに、一貫性のある情報共有はトラブルやクレームを未然に防ぎ、大学としての信頼性を高める効果ももたらします。

チャットボットを大学に導入する手順

手順①.導入目的の明確化

最初に、大学でチャットボットを導入する際の目的を明確にすることが重要です。

たとえば「学生からの問い合わせ対応を自動化したいのか」「入試関連の問い合わせを減らしたいのか」「学内手続きの周知を効率化したいのか」など、運用のゴールをはっきりさせることで、必要となる機能や運用体制をイメージしやすくなります。

大学によっては、広報や学生募集、在学生向けサポート、社会人向け講座の案内など、多様なニーズが同時に存在する場合もあります。そのため最初から欲張りすぎるのではなく、導入効果がわかりやすい領域を選び、段階的に拡張していくことでリスクを低減できます。目標が定まれば、チャットボットの開発・導入プロセス全体の方向性がブレにくくなり、学内関係者の理解と合意も得やすくなります。

手順②.最適なチャットボットツールの選定

導入目的が明確になったら、次は大学のニーズに合ったチャットボットツールを選ぶ段階です。

クラウド型かオンプレミス型か、AIによる自然言語処理が必要か、あるいはルールベースのシンプルなボットで十分かなど、検討すべきポイントは多岐にわたります。学内のシステム環境や利用者数、予算規模を考慮しながら、最適なソリューションを見極めることが重要です。加えて、管理画面の使いやすさやサポート体制もツール選定のポイントになります。カスタマイズが難しいツールを導入した場合は、学内業務に合わせるための対応に時間とコストがかかりすぎてしまう恐れがあります。

手順③.担当者や担当部署の決定

チャットボットを運用・管理するうえで、担当者や担当部署の設定は不可欠です。

特に、FAQデータベースの整備や、学内ルールの更新にあわせた内容修正などは、誰が責任を持って行うのかを明確にしておかないと、導入後の運用がスムーズにいきません。多くの大学では、総務部門や情報システム部門、あるいは学生支援を担当する部署が中心となって運用します。

また、導入の際には広報担当や教務担当、図書館など複数の部署が関与することもあるため、関係者間で情報共有を徹底し、役割分担をはっきりさせておくことが求められます。運用開始後も定期的な会合や報告の場を設け、チャットボットの利用状況をモニタリングしながら、必要に応じて運用方針を調整していく姿勢が大切です。

手順④.シナリオの作成

チャットボットを実際に運用するうえで、ユーザーの質問に適切に答えるためのシナリオや回答パターンを作り込む作業が必要です。

学内で想定される質問をリストアップし、FAQとして整理し、その後AIの学習データやルールベースの分岐に落とし込みます。たとえば「履修登録に関する質問」をカテゴリー化し、そのなかで「登録期間」「履修取消」「単位要件」などのキーワードを細かく設定するといった手順が考えられます。こうしたシナリオを構築する段階で学生や事務職員からのフィードバックを得ると、実際の問い合わせ内容とのズレを減らしやすくなります。また、シナリオ作成においては、一問一答形式だけでなく、ユーザーの意図をくみ取った深掘り型のやり取りを想定することも、利便性向上につながります。

手順⑤.運用開始

シナリオが完成し、担当者やツールの準備が整ったら、いよいよ運用を開始します。

初期段階では、利用者がどのような質問をよくするのか、回答に誤差が出ていないかなどを重点的にモニタリングすることが大切です。もし誤回答が多い項目があれば、早めにシナリオやデータベースを修正し、ユーザーが円滑に情報を得られるよう調整します。大学のポータルサイトや学内広報などでチャットボットの利用方法やメリットを告知し、学生や教職員に積極的に使ってもらう取り組みも重要です。スムーズな初期運用が定着すれば、その後はより高度な問い合わせ対応や多言語化、他の学内システムとの連携など、導入範囲を拡大する余地も生まれてきます。

導入効果を上げるポイント

効果測定の実施

チャットボット導入後は、その効果を定量的・定性的に把握することが欠かせません。

たとえば「1日の問い合わせ対応件数をどの程度削減できたか」「学生の満足度は向上したか」など、導入目的との関連性を意識した指標を設定します。アクセスログの分析やアンケート調査を行い、チャットボットが実際にどのように使われているかを可視化する作業が重要です。導入後の変化を数値化することで、学内関係者に対する説明責任を果たすだけでなく、運用改善にも役立ちます。利用率が低い場合は、案内のわかりやすさや導線の見直しなど、別の対策を検討する契機にもなります。

定期的なメンテナンス

チャットボットは一度導入して終わりではなく、常に最新情報を反映させるメンテナンスが必要です。

大学はカリキュラム変更や行事スケジュールの更新などが頻繁に行われるため、その都度チャットボットのデータベースを修正しなければなりません。もし情報が古いままだと、誤った回答が増えて利用者の信頼を失う恐れがあります。担当者が定期的にFAQや回答パターンをチェックし、改善を続ける体制を整備することが大切です。大掛かりなメンテナンスは年に数回で済むかもしれませんが、小さなアップデートは日常的に行うことで、常に高品質な応答を維持できます。

フィードバックの活用

運用を続けるなかで、学生や教職員、保護者などからのフィードバックを積極的に収集する姿勢が欠かせません。

チャットボットが返す回答に対する評価や追加してほしい質問項目、操作性への要望など、利用者の声はシナリオや設計を改善するための貴重な情報源になります。たとえば、学内掲示板やアンケートフォームを通じて定期的に意見を集め、担当部署が迅速に反映するプロセスを構築すれば、利用者満足度の向上が見込めます。こうしたフィードバックの蓄積は、大学全体のデジタル化やDX推進にも応用可能です。チャットボットの改善を通じて学んだノウハウは、他のオンラインサービスや学習支援システムの質を高める上でも大いに役立ちます。

大学におけるチャットボットの導入事例

富山大学

富山大学では、ホームページ上にチャットボットを設置しています。このチャットボットは、利用者が選択式の質問に答えると求めている回答に辿り着く仕組みです。

受験生や在学生、卒業生、報道機関などに向けてさまざまな回答を用意しており、学内外問わず幅広い問い合わせに対応できます。また、24時間365日、場所や時間に関係なく問い合わせに即時対応できる点もポイントです。

大東文化大学

大東文化大学では、ホームページ上に公式キャラクターの「パラブン」を使用した「おしえてパラブン」というチャットボットを設置しています。現在は在学生向けに運用をしており、学生生活や留学、キャリアなどについての問い合わせが可能です。

このチャットボットは、利用者が選択式の質問に答えることで、求めている回答に導く仕組みです。また、キーワード入力でも質問が可能で、大学におけるさまざまな疑問をいつでも問い合わせることが可能です。

駒澤大学

画像引用元:駒澤大学「教務部」

駒澤大学では、LINEの公式アカウントで在学生向けのチャットボットを運用しています。履修・授業・試験・成績などに関するよくある質問が登録されており、学生の疑問や不安の自己解決を促す仕組みです。

学生は24時間365日、場所や時間に関係なくチャットボットを利用でき、スムーズに疑問を解決できます。また、授業日程の変更など、在学生に向けた大学からの情報発信も可能です。

実践女子大学

実践女子大学では、在学生向けにAI搭載のチャットボットを導入しています。創立者である下田歌子の伝記漫画「きらりうたこ」に登場する「歌子ちゃん」をキャラクターに採用し、親しみやすさを出している点がポイントです。

専用ページまたは大学ホームページの「在学生の方へ」などのページで公開されており、課外活動や就職活動、履修、証明書等の発行など、在学生の抱える疑問を解決します。

大学の予約受付を自動化する予約システム「RESERVA」

画像引用元:RESERVA ac公式サイト

大学の運営におすすめの予約システムであるRESERVA(レゼルバ)は、国内シェアトップクラスの実績を誇るクラウド型予約管理システムです。業界・業種問わずあらゆるビジネスに対応しており、350種類以上の業態で利用されています。また、PC・スマホ・タブレットに対応しており、最短3分で予約システムを作成できます。管理画面もシンプルでわかりやすく、サポート体制も整っているため、はじめての予約システムに最適です。さらに、ISO/IEC 27001ISO/IEC 27017を取得しているだけでなく、SSLにも対応しており、堅牢なセキュリティ対策が施されているため、学生の個人情報も保護します。

まとめ

チャットボットは、人手不足や業務の煩雑化といった大学の現場が抱える課題を解消するうえで、極めて有効なソリューションといえます。問い合わせ内容の自動化により、事務職員は専門的な相談への対応や学生支援の充実といった、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。さらに、24時間対応や多言語対応など、学生や受験生が抱える多様なニーズへの迅速な応答が可能となり、利便性と満足度の向上にも寄与します。

また、チャットボットだけでなく予約システムを導入することにより、予約管理業務の自動化も図れます。特に予約システムRESERVAは、大学の予約受付に役立つさまざまな機能を搭載しており、学生の利便性と大学職員の予約にかかわる煩雑な業務を大幅に改善します。

大学にチャットボットの導入を検討している人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

矢印 Facebook X